まったりのんべんだらり


by ayafuji_rie
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アバンティ

 週末二連休初日の土曜。何もないしらけた夕暮れ時。お決まりのラジオをつければ、お決まりのざわめき。
ときめきならば良いのに、なんてベタな掛け言葉もホドホドに、冷めたコーヒーを口に運ぶ。
ラジオからはウイスキーグラスの小気味良い音が響く。

 部屋の隅に視線を向ければ、残りも指3本分になったウイスキーの瓶が埃を被っている。
「しばらく飲んでないな」
そう呟きボトルを手に取る。さわさわと撫でるように埃を払ってみる。こんな感じで彼女の肩の雪を払ったのはもう去年の冬。

「たまには飲むか。」
ラジオに誘われるように今夜の予定をざっくりとたてる。予定といっても帰ったら飲むだけ。とりあえずは買い物だ。まぁ近所のスーパーでも行くか。

ラジオからは小気味良いジャズが聞こえてきた。


 木枯らしの吹き抜ける窓の外をちらりと見てコートを羽織る。冷えきった生地が肌に触れる。自分自身の体が暖かいことを確認するようにパンパンと肩を払った。


ドアを開けると去年とは違う冬の匂いがした。

目を閉じて冬の空気を胸いっぱいに吸い込む。

空の彼方から白鳥の声がする。

ゆっくりと目を開き空を見上げる。

ひんやりと澄んだ空気を積み重ねた橙色から藍色のグラデーションが滲む空には星が瞬き始めている。

どんなに厚い雲に遮られても確かにそこで輝く小さな光たちに胸を打たれたのはなぜだろう。

何も特別じゃない小さな小さな、けれども、とてもとても大切なことが、この胸の片隅で思い出された。


通りへと足を踏み入れた瞬間、街灯の光がさらさらと音も無く光の道を描いた。



ささやかな幸せが胸に灯る。


今日の晩飯は久々に何か作ろう。部屋を片付けて誰かを呼ぼうか。



力はふとした瞬間に湧きあがる。


心はふとした瞬間に思い出せる。



街灯の白い明かりは確実に私を導いていた。


その行く先はどこか知らないけれども。
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by ayafuji_rie | 2004-12-18 16:11 | 遠い足音